ゆんこ(あきばっか〜の踊り手)は名店のタコ焼き。硬さと柔らかさの使い分けで、ひと口でトリコにさせる。
関西から、反則クラスのチームがあきばっか〜のに現れた。
それは自爆とゆんこ。
世界を舞台に活躍する自爆と、関西ではすでに名が知れ渡っているAPOPにも精通したジャズダンサーのゆんこ。
そのゆんこが、あきばっか〜のですべてをかっさらっていったのがこのムーブかもしれない。
賭けグルイの音がはじまった瞬間に、何の合図もなく中央に進んだゆんこ。
その主役感たるや堂々としたものだ。
どよめく観客。
ゆんこはそんな反応にも全く動じず、トランペットの軽快な音に合わせて、コンパクトに硬質な動きを入れていく。
これまでのあきばっか〜のになかった、大人の色艶のある動きだ。
すると、ここ一番でトランペットの音が高まった。ゆんこの動きが、不意に柔らかく伸びのあるものに変わる。
身体から手が勢い良く放たれて、その弾道は指先までしなって意思を持つ。
たったワンフレーズでここまで落差のある組み合わせに、否が応でも沸き上がる観客。
と、ここまで開始わずか7秒。
名店のタコ焼き(どちらかと言えば関東)のうまさも、ゆんこに通じるものがある。
その技術力は、第一印象であっという間に認めてしまうのではないだろうか。
外はカリッとしているのに、食べるとフワッとしたやわらかさを包み込んでいる。
ひとつの食べ物に、ふたつの食感。軽い裏切り。
そして、そのひと口で納得させ、トリコにさせる。
絶妙な掛け合わせが広がりを産み、豊かさと無限の可能性を感じさせ、同時に次のタコ焼きを求める自分がいる。
周りの環境にも左右されず、変速的な音に寸分の狂いもなく、合わせていくムーブ。
早いピッチは小刻みに切るような硬い動きでリズムを保つ。
ボーカルが声を伸ばす。そのタイミングに合わせて動きが変わった。
小さな動きが蓄積されている者にとっては、伸びやかな動きやラインは、ことさら比例して大胆に美しく感じる。実際、指先まで神経が行き届いていて美しい。
ゆんこは、最初から最後まで、完璧に賭けグルイを踊りきった。
僕たちの記憶に、また1店舗、通い詰めるであろう名店のタコ焼きがリストアップされた。
そして、この味はゆんこにしか出せない。
味わいたいなら、再びゆんこに踊ってもらうしか、方法はないのだ。
ボーカルのハスキーボイスと、テンポの良い音楽に合わせて、オーバーロードの世界に憑依するゆんこ。
長い手足は、感情の振れ幅をさらに増幅させる特効薬だ。
日頃の練習で、その手足をしなるほどに自在に操れる。
フィニッシュは、ゆんこが背面へと大きくのけぞり、その体を手が支える。
ゆんこは毎日踊ることで、自分が何者なのかを知りたがっているようにも見えた。